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お金のことば

ニュースに出てくる7つ 2026年7月

この7つは、つながっている

お金の話は、言葉さえ分かれば半分は読めます。ここに挙げた7つは、毎日のようにニュースに出てくるものばかりで、ばらばらの用語ではなく、すぐ下の見取り図のようにつながって動いています。

まず図を眺めてから、項目1へ進んでください。上から順に読むと、この輪をたどって最後の「国の借金」まで届きます。

数字はすべて、2026年7月末までに国の機関や銀行が公表したもので、出典は各項目の末尾に付けてあります。

全体の見取り図 ── 途中で迷ったら、ここに戻ってきてください

1 物価 買い物かごまるごとの値段
▼ 上がった分を差し引いて測ると
2 給料の実質・6 年金 実際に買える量は増えたか
▼ 物価を落ち着かせるため、日本銀行が動かす
3 金利 お金を借りる値段
▼ 利息の多くつく通貨へお金が移って
4 円安・円高 円の力の強さ
▲ 輸入品の値段を通じて、いちばん上の「1 物価」に戻る
5 GDPこの輪の外にある「ものさし」。経済の大きさを測る
7 国の借金3 の金利が上がると利払いが増える。重さは 5 のものさしで測る
くり返し出てくる考え方 ── 名目と実質

名目は、表に出ている金額そのもの。実質は、そこから物価の上がった分を差し引いた、実際に買える量のことです。

給料にも、国全体の生産にも、年金にも、この二つがあります。「増えたはずなのに楽にならない」と言われるとき、たいていは名目は増えたが実質は増えていないという意味です。この区別は、項目2・5・6に出てきます。

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物価 ── 一つの品物ではなく、買い物かごまるごとの値段

買うものは変えていないのに、スーパーの会計が高くなっている──あの「全体として上がっている」感じを、一つの数字にしたものが物価です。一つの品物ではなく、暮らしの買い物まるごとの平均の高さを指します。

総務省が毎月、全国のお店で品目ごとの値段を調べ、指数という形にまとめています。これが消費者物価指数(しょうひしゃぶっかしすう、CPI)です。基準になる年(いまは2020年)を100と決めて、そこから何%動いたかで表します。

2026年6月の指数は113.6でした。これは、2020年に1万円で買えた買い物かごが、いまは1万1360円かかるという意味になります。ニュースで「物価上昇率」と言うときは、指数そのものではなく、前の年の同じ月と比べてどれだけ動いたかを指しています。6月は1.7%の上昇でした。

指数は3種類、並べて発表されます。野菜や魚は天候で大きく上下するので、それを外した「生鮮食品を除く総合」がいちばんよく使われます。さらに石油や電気も外した「生鮮食品及びエネルギーを除く総合」は、外国の事情に振り回されない、国内の本当の値上がり具合を見るためのものです。

物価は政策でも動きます。2025年末のガソリン暫定税率の廃止は、電気・ガス代への支援と合わせて、2026年2月から4月の物価を0.7ポイントほど押し下げたと政府は試算しています。値上がりが止まったのではなく、税と補助で一時的に押し下げた分が含まれている、ということになります。

いまの数字(2026年6月分・7月24日公表)
総合
113.6 前の年の同じ月より 1.7%の上昇
生鮮食品を除く総合
113.1 同じく 1.6%の上昇
生鮮食品及びエネルギーを除く総合
112.2 同じく 1.7%の上昇

つながり物価の上がり方が分かって初めて、次の「給料は本当に増えたのか」が計算できます。

総務省統計局 消費者物価指数


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実質賃金 ──「上がったのに苦しい」を測るものさし

「上がったはずなのに、暮らしは楽にならない」──その食い違いは気のせいではなく、測るための数字があります。受け取った金額から、物価の上がった分を差し引いたものです。

給料が3%増えても、その間に物価が3%上がっていれば、買えるものの量は去年と変わりません。名目と実質を分けて発表するのは、この食い違いを見えるようにするためです。

2026年5月、働く人一人あたりが受け取った金額(現金給与総額)は31万1165円で、前の年の同じ月より3.2%増えました。名目で3%を超える伸びが4か月続いたのは、1992年3月以来、34年2か月ぶりとされています。そして物価の上がり方が鈍っていたため、実質でも1.4%の増加となり、5か月連続でプラスになりました。

この計算で差し引く物価には、消費者物価指数のうち「持家の帰属家賃を除く総合」という少し違うものさしが使われます。持ち家に住んでいる人が自分に家賃を払っていると見なして計上する部分を外したものです。実際に支払いが発生する、暮らしの負担の実感に近づけるためです。

実質賃金が5か月続けてプラスになった理由の半分は、賃上げが広がったことです。もう半分は、ガソリンの暫定税率廃止などで物価の上がり方が鈍ったことにあります。後者は一度きりの効果なので、この先も続くとは限りません。

この考え方は、給料を受け取っていない人にも他人事ではありません。年金(項目6)も、預金も、理屈は同じです。物価が1.7%上がる年には、増え方が1.7%に届かないお金はどれも、実質では目減りしています。

受け取った金額(名目)が 3.2% 増えた
▼ そこから物価の上がった分を差し引く
実際に買える量(実質)は 1.4% 増えた
いまの数字(2026年5月分・速報)
現金給与総額
31万1165円 前の年の同じ月より 3.2%増
実質賃金
1.4%増 5か月連続のプラス
基本給(所定内給与)
27万5942円 3.0%増

つながり実質賃金が増え続けるかどうかは、物価が落ち着くかどうかにかかっています。だから日本銀行は、次の「金利」を動かして物価を調整しようとします。

厚生労働省 毎月勤労統計調査 2026年5月分結果速報


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金利 ── 日本銀行が握っている一本のレバー

長いあいだ、銀行にお金を預けても利息はほとんど付きませんでした。それを大もとで決めていたのが金利──お金を借りるときの値段──です。日本銀行が直接決めているのは、期間がいちばん短い一つだけで、そこから他のすべてに波及していきます。

日本銀行が決めているのは無担保コールレート(オーバーナイト物)という金利で、銀行どうしが1日だけお金を貸し借りするときの利率です。ここが動くと、住宅ローン、企業がお金を借りるときの利率、預金の利息、国債の利回りが、順に引きずられて動いていきます。だから「政策金利」と呼ばれます。

2026年7月31日の金融政策決定会合で、日本銀行はこれを1.0%程度に据え置くことを決めました。6月の会合で引き上げたばかりで、その影響を見極める段階にあるためとされています。9人の委員のうち1人は、1.25%まで引き上げるべきだとして反対しました。

なぜ金利を上げると物価が抑えられるのでしょうか。借りる値段が高くなれば、家や設備を買うのを控える人や会社が出てきます。使われるお金が減れば、ものが売れにくくなり、値上げがしにくくなります。逆に金利を下げれば、借りやすくなって景気が温まります。物価が上がりすぎれば金利を上げ、景気が冷えすぎれば下げます。この一本のレバーで調整しています。

ただし副作用があります。預金の利息が増える一方で、住宅ローンを変動金利で借りている人の返済額も増えます。そして国が借りているお金の利払いも増えます(項目7)。

暮らしの側からは、この動きは通帳の利息欄に現れます。普通預金の金利は、長く年0.001%──100万円を1年預けて利息10円──でしたが、2026年8月からは大手銀行で年0.4%、同じ100万円で4000円ほどになります(税金を引く前の計算です)。

日本銀行が金利を上げる
▼
お金を借りる値段が高くなる
▼
家や設備を買うのを控える人・会社が出る
▼
ものが売れにくくなり、値上げがしにくくなる
いまの数字
政策金利
1.0%程度(2026年7月31日の会合で据え置き)
直前の動き
2026年6月の会合で引き上げ
大手銀行の普通預金金利
年0.4%(2026年8月3日から)

つながり金利は物価だけでなく、次の「円安・円高」も動かします。世界の投資家は、利息が多くつく通貨を選ぶからです。

日本銀行 金融政策決定会合の決定事項・三菱UFJ銀行 円普通預金金利の改定について・三井住友銀行 各種預金金利の変更について


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円安・円高 ──「安い」のは、あくまで相手と比べて

小麦粉やコーヒー、電気代──値上がりのニュースの説明に、決まって顔を出すのが円安です。円が高いか安いかは、円だけでは決まらず、かならず相手の通貨との比べ方で決まります。

1ドルを買うのに100円で足りていたのが、160円必要になったとします。同じ1ドルの品物を買うのに、より多くの円を出さなければなりません。円の力が弱まったということで、これを円安といいます。ここで分かりにくいのは、数字が大きくなるほど円は安いという点です。「160円まで上がった」と聞こえますが、上がっているのはドルの値段のほうで、円は下がっています。

2026年7月30日の終わり値は1ドル=159.53円でした。ただしこの日は、ドルがいちばん高いときで163.74円、いちばん安いときで157.98円と、一日のうちに5円以上も動いています。為替は一日のうちでもこれだけ動くものだと知っておくと、日々の数字に一喜一憂せずにすみます。

なぜ動くのでしょうか。いちばん大きく効くのは、国どうしの金利の差です。日本の金利が1.0%で、アメリカのほうが高ければ、同じお金を置いておくならドルのほうが利息がつきます。だからドルが買われ、円が売られます。日本銀行が金利を上げると円高に振れやすいのは、この差が縮まるからです。

暮らしには両側から効いてきます。食料も燃料も多くを輸入しているので、円安になれば仕入れ値が上がり、物価を押し上げます(項目1に戻ります)。一方で、外国に売っている会社の利益は増え、日本に来る旅行者にとっては割安になるので観光地は潤います。円安がよいか悪いかを一言で言えないのは、立場によって向きが逆になるからです。

1ドル=100円のとき 3ドルの輸入品は300円。円の力が強く、外国のものが安く買えます。
1ドル=160円のとき 同じ3ドルの輸入品が480円。品物は変わっていないのに、支払う円は6割増えます。
いまの数字(2026年7月30日)
終わり値
1ドル=159.53円
その日の幅
157.98円 〜 163.74円

つながり円安は輸入品の値段を通じて物価(項目1)に戻り、物価は金利(項目3)を動かし、金利がまた為替を動かします。この三つはぐるぐる回っています。

日本銀行 東京外国為替市場における取引状況


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GDP ── 一年のあいだに、新しく作り出した分

国内で1年間に新しく生み出された価値を合計したものです。国が持っている財産の額ではなく、その年にどれだけ作ったかを表します。

大事なのは「新しく生み出された」という部分です。中古品の売り買いや、株が値上がりした分は入りません。持ち主が変わっただけで、新しく何かが作られたわけではないからです。

パン屋で考えると分かりやすくなります。小麦を100円で仕入れ、パンを250円で売ったとします。GDPに入るのは250円ではなく、その差の150円です。小麦の100円は、すでに農家のところで数えられています。二重に数えないよう、それぞれの段階で新しく付け足された分だけを積み上げていきます。この足し算を国じゅうで行ったものがGDPです。

2025年度の日本の名目GDPは669兆9702億円で、5年続けて過去最高を更新しました。ただし「名目」と付いているとおり、これには値段の上がった分が含まれています。作った量が去年と同じでも、値段が上がれば名目GDPは増えてしまいます。量そのものを見たいときは実質GDPを使います。項目2の実質賃金とまったく同じ考え方です。

この数字が繰り返し使われるのは、国の経済の大きさを測る共通のものさしだからです。次の項目に出てくる借金の重さも、税収の多い少ないも、金額そのものではなく、このGDPと比べてどれほどの大きさかという形で語られます。

物価や年金とちがって、この数字に暮らしの中で直接出会うことはありません。それでかまいません。ものさしは、何かを測るときにだけ取り出せば足ります。

いまの数字
2025年度の名目GDP
669兆9702億円(およそ670兆円) 5年連続で過去最高

つながりここでも「名目」と「実質」が出てきました。項目2と同じ区別です。国全体でも、個人の給料でも、考え方は変わりません。

内閣府 国民経済計算(GDP統計)


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年金 ── 物価が上がっても、その分まるごとは増えない

年金を受け取っている人の手もとには、毎年6月ごろ、その年の金額を知らせる「年金額改定通知書」がはがきで届きます。そこに書かれた増え方は、物価や賃金の動きがそのまま反映されたものではありません。

2026年度の年金は、決まりどおりなら、賃金の伸びに合わせて2.1%増えるはずでした。しかし実際の改定は、国民年金(基礎年金)が1.9%増、厚生年金の報酬比例部分が2.0%増となりました。2026年1月に厚生労働省が発表したものです。

差の0.2ポイントを削っているのがマクロ経済スライドという仕組みです。削る幅は思いつきではなく、二つの数字から計算されます。年金を支える現役世代(被保険者)が増えたか減ったか、そして受け取る人の平均余命がどれだけ延びたか。2026年度は、被保険者数の変動が0.1%のプラス、平均余命の延びを勘案した率が0.3%のマイナスで、合わせて0.2%のマイナスとなりました。

つまり、支える人が減り、受け取る期間が延びた分だけ、増やし方を抑えているということになります。2026年度で4年続けての発動です。

金額としては増えています。それでも「実質的には目減り」と報じられるのは、増え方が物価の上がり方に届かなければ、買える量は去年より減ってしまうからです。ここでも効いているのは、冒頭に置いた名目と実質の区別です。

本来の改定率 +2.1%(賃金の伸びと同じ)
▼ 支える人の数と平均余命から −0.2%
実際の改定率 +1.9%(基礎年金)
いまの数字(2026年度・4月分から)
国民年金(基礎年金)
1.9%の引き上げ
厚生年金(報酬比例部分)
2.0%の引き上げ
マクロ経済スライドによる調整
−0.2%(被保険者数 +0.1%、平均余命の延び −0.3%)

つながり年金が実際に増えたかどうかを判断するには、項目1の物価上昇率と並べる必要があります。1.9%の引き上げと1.7%の物価上昇なら、差はごくわずかということになります。

厚生労働省 令和8年度の年金額改定について・日本年金機構


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国の借金 ── なぜ「潰れない」と言われるのか、限界はどこにあるのか

国は毎年の支出を税収だけではまかなえず、足りない分を国債という借用証書を売って借りています。それが積み上がったものが残高です。

2026年度の一般会計、つまり国の一年分の家計簿は122.3兆円で、過去最大となりました。そのうち国債費――借りたお金を返す分と利息を払う分――が30兆円を超えています。支出全体のおよそ4分の1が、過去の借金の後始末に消えている計算になります。

積み上がった普通国債の残高は、2026年度末で1145兆円に達すると見込まれています。項目5で見た名目GDPがおよそ670兆円ですから、一年間に国じゅうで作り出す価値の1.7倍ほどの借金がある、ということになります。

それでも「日本はすぐには潰れない」と言われる理由は、主に二つあります。一つは、借金がすべて自国の通貨である円でされていることです。外国の通貨で借りていると、返す段になってその通貨が手に入らず行き詰まることがありますが、円であれば日本が自分で発行できます。もう一つは、その国債の多くを日本銀行と国内の金融機関が持っていることで、外国の投資家の判断で一斉に売り浴びせられる形になりにくいのです。

では限界はどこにあるのでしょうか。おそらく「返せなくなる」より先に、通貨の価値と金利のほうが壊れます。国債の信用が下がれば、買ってもらうためにより高い利息を付けなければならなくなります。残高が1145兆円あるということは、金利が1%上がれば、借り換えが進むにつれて年に10兆円の規模で利払いが増えていくということでもあります。項目3で「日本銀行が金利を上げると国の利払いも増える」と書いたのは、この意味です。日本銀行が利上げを慎重に進めるのは、物価だけを見ているわけではないのです。

いまの数字(2026年度)
一般会計の総額
122.3兆円 過去最大
うち国債費
30兆円超 全体のおよそ4分の1
普通国債の残高
1145兆円(2026年度末の見込み) 名目GDPのおよそ1.7倍

つながりここに、これまでの6つが集まってきます。物価が上がれば金利が動き、金利が動けば為替と国の利払いが動き、その重さはGDPとの比で測られます。7つは別々の話ではなく、一つの輪になっています。

財務省 これからの日本のために財政を考える